霊枢「病伝篇」

「九鍼の知識を得て、導引行気、按摩、灸、熨(押さえる)、鍼刺、火鍼および服薬などの治療がある、運用に関して、その中の一種類を用いるのか、同時に複数の種類を用いるのかを知りたい」
・治療法は多くの人の様々な疾病治療に適応するためのものであって、一人の病人に対して多くの治療法を用いるものではありません。

「ひとつの相対的原則を理解して忘れなければ、様々な複雑な課題を解決することができる。疾病が変化する様相、及び病邪が転移して蔵気を損なわせて治療が困難になる理由がしりたい」
・これらの問題は極めて重要なものです。これらの医学原理はそれらがわかっていれば、白昼に歩くがごとく、わからなければ夜中に目を閉じて歩くようなもので何事も察知し難いものです。
原理を受容し掌握しなければならないばかりか、その上それに照らして実践運用しなければいけない
精神を集中して体験し、模索して初めてすべてを理解する境地に達することができる。
要領を把握したなら、神業を入手し、すべては思い通りになります。
こうした理論は後世に伝えるべく、書物として残すべきです。

「昼に目が醒めるとは?」
・陰陽の原理を明らかにするということは、とまどうような難問に明確な答えが得られるような感覚です

「夜に瞑るとは?」
・病邪が人体に侵入したあと引き起こされた内部変化は、音もなく、形もなく、見ることもできなければ、探り当てることもできず、まるで明かりのない夜を目を閉じているようなもので、何も見えない
しらないうちに、毛が抜け、皮膚のキメが開いてたくさん汗をかき、正気が大いに損なわれると、邪気が充満し、血脈を経て内蔵に伝わり、腹痛を引き起こします
臓府の機能は乱れ、邪気が盛んで正気が虚なる深刻な段階に至ると、治癒は簡単ではなくなる。

「大邪の気が内蔵に侵入したあと、どのような病変が発生するか?」

・邪気が蔵に入り
疾病がまず心に発生すると
1日後には肺→
3日後には肝→
5日後には脾→
さらに3日あとで治らなければ死ぬ
冬なら夜半ごろ
夏なら正午ごろに死ぬ

・疾病が肺に発生すると
3日後には肝
1日で脾
5日後に胃
さらに10日経っても治らないのであれば死ぬ
冬なら日没ごろ
夏なら日の出ごろ

・疾病が肝に発生すると
3日後には脾
5日後には胃
3日後に腎
さらに3日経っても治らなければ死ぬ
冬なら日没ごろ
夏なら朝食ごろ

・疾病が脾に発生すると
1日後に胃
2日後に腎
3日後に背筋と膀胱に伝わる
さらに10日すぎても治らない場合死ぬ
冬なら人々が眠りにつく
夏なら夕食ごろ

・疾病が胃に発生すると
5日後で腎
3日後に背筋と膀胱
5日で上って心に伝わります
さらに2日過ぎて治らない場合死ぬ
冬なら夜半
夏なら午後

・疾病が腎に発生すると
3日後に背筋と膀胱
3日後に上って心に伝わり
3日後には小腸
さらに3日過ぎて治らない場合死ぬ
冬なら夜明けごろ
夏ならたそがれごろ

・疾病が膀胱に発生すると
5日すぎで腎
1日で小腸
1日で心
さらに2日過ぎて治らない場合死ぬ
冬なら鶏鳴のころ
夏なら午後

各蔵に疾病が発生すると、相剋の順序に従って転移
疾病の転移の順番が一蔵をおいて伝わるとき、あるいは第二、第三、第四の蔵へと伝わるときは、鍼治療を施すことができます

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