霊枢「逆順肥痩篇」

鍼のわざとは、天地自然と社会、人間推移の法則に符合しているので、明確な法則があります
推測の目安として、手段、手法、規則を決め、その後ようやく後世に流伝することができるのです。実践でこうした法則を運用することを理解できれば、客観事物を根拠として、人々に簡便な方法を用いることを教えて、経脈の逆順の法則を掌握できるようにさせられるのです。

「どうすれば自然にかなうかを教えてほしい」
・たとえば、水の深いところから堤防を決壊させ放水させるようなもので、多くの手間暇をかけずに放水させることができます。
こうした例をもって、人体の気機の滑渋、血液の清濁、経気運行の逆順を説明することができます。

「皮膚の白黒、肥痩、年齢で鍼を刺す際の深浅や回数に一定の基準があるのか?」
・壮年で体格の堂々樽人は気血が充実し、皮膚も堅固ですので、邪気を感受して発病した場合は深く刺し置鍼ができる。
・肩幅があり、項部の肉は痩せて薄く、皮膚のキメが荒く色が黒く、口唇は厚く垂れており、こうした人の血色は深くて濃厚で気の巡りは渋滞し、正確は勝ち気で積極的
こうした人は深く刺して置鍼し、そのうえ鍼を刺す回数を増やしてよい。

「痩せた人を治療するには?」
・痩せた人は、皮膚が薄く、顔色も淡く、肉も痩せ細って、口唇が薄く、話し声は軽く、こういう人の血は薄く、気は滑らかですから、気を逃しやすく、また血もそこないやすいので、こうした患者には浅く刺して速く抜かなければいけない。

「一般の人を治療するには?」
・皮膚の色の白黒を判断し、異なった方法を用いなければならない、実直で温厚な人に対しては、その血気も調和しているので、こうした患者には普通の刺法を違えてはいけない

「壮年の骨格の堅固な人を治療するには?」
・動くのを好まないのであれば、気渋血濁に属するので、深く刺して置鍼すべきで、刺鍼回数も増やさないといけない
・活発の場合は気滑血清に属するので、治療は浅く刺し、速く抜かなければいけない

「赤ん坊の治療をするには?」
・赤ん坊は血は少なく気が多いので、豪鍼を用い、浅く刺して速く抜かないといけない、1日に2回治療をしても良い

「深きに臨みて水を決するとは?」
・血が清くて、気が濁っていれば、迅速に瀉法を用いる、そうすれば邪気を除き去ることができる

「掘に循いて衝を決するとは?」
・血が濁って気が渋っていれば、迅速に瀉法を用いれば、経脈の気血をすぐに流通させることができる

「経脈の巡行する逆順の様相はどのようであるか?」
・手の三陰の経脈は内蔵から手部へ走行し、手の三陽の経脈は手部から頭部へ走行、足の三陽の経脈は頭部から足部へ走行、足の三陰の経脈は足部から腹部へ走行

「足の少陰の経脈だけが下行するのはなぜ?」
・そうではなく、衝脈は五臓六腑の気血が集まるところで、五臓六腑はいずれも衝脈の気血の涵養を享受している
上行する部分は、咽の後壁上の後鼻道から出て、陽経に滲みこみ、精気を注ぎます。
下行する部分は、足の少陰経の大絡に注ぎ、気街部より出て巡り、大腿内側に沿って下り、膝の裏側のくぼみに入り、脛骨内を潜行して、さらに下って内踝の後の踵骨の上縁に至って別行します。
別に下行する一支は、足の少陰経と併行して巡り、三陰経に滲み込みます。前面を巡る一支は、内踝の後の深部から踵骨の結節の上縁に出て、下って足の甲に沿って足の大指の中に入り込み、その部の諸絡脈に滲みこんで、肉を温め栄養します。それゆえ、その脈の別絡が瘀血し停滞すると、足の甲にある脈が拍動せず、気血の停滞を招いて脛や足が冷える

「どのような方法を用いて経気の逆順をつきとめられるのか?」
・症状を聞いて、手足の脈の拍動の有無をみて、厥逆でなければ、拍動があるはず、なければ巡行は逆順である

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