霊枢「本蔵篇」

「人体の気血と精神は、生命を養い正常な生理機能を維持するものである。経脈は気血の通行する通路であり、身体の内部と外部に気血が通行する通路があり、身体の内部と外部に気血を往復運行させ、筋骨を潤し、関節の動きを滑らかにするものである。
衛気は分肉を温め、皮膚を充たして栄養し、腠理を潤して、汗腺の開閉を主るもである。
人の意志は、精神活動を統御し、魂魄を収監し、人体の冷熱の刺激に対する適応能力と情志の変化を調整するものである。
したがって、気血が調和して正常活動が保持されれば、気血は伸びやかに巡り、全身の内外はみなこの往復循環の過程で十分な栄養を獲得し、それによって筋骨は強靭で力強くなり、関節が滑らかで思いのままになる。
衛気の機能が正常であれば、精神を集中でき、思推が敏速で、魂魄の活動など乱れがなく、後悔や憤怒などの過度の感情の動揺がなく、それゆえ五臓を安定させ、邪気の干渉を受けることがない。
もし人が気候や飲食の冷暖に対して良い具合に適応と調整ができ、六腑の水穀を輸送し化成する機能が正常に働き、気血の源泉が満ち満ちていて、経脈が滞りなく流通すれば、たやすく外邪を感受して風病や痺病を発症することがなくなり、肢体の関節がみな正常な動きを保持することができる。
これらが人体の正常な生理状態である。
五臓は精神や気血や魂魄を貯蔵するものであり、六腑は水穀を伝送し化成して津液を運行するものである。
これらの機能はすべて先天的に受けているものであり、愚鈍や聡明、賢者や不肖を問わず、異なることはない。
しかし、ある人は授かった天寿を全うすることができ、外邪に損なわれることなく、身に持病がなく、百歳になっても衰えず、大寒・大暑・突風・暴風という病を招く強烈な要因を感受しても、損傷されない。
ある人は身は家から出ず、居室に隙間がなく、風雨に侵入がなく、驚き恐れる感情の刺激もないが、それでも病になることを免れることができない、この道理を知りたい」

・これはかなり難しい問題です。五臓の機能と活動は自然界と相応し、陰陽の変化の法則と符合し、四時の変化と関係を持ち、五つの季節の変化とも相応しているのです。
人体の五臓にはもとより、大小・高低・堅脆・端正と偏頗の差異があり、六腑にもまた大小・長短・厚薄・曲直と緩急の区別があります。
これら二十五種の様相は、それぞれ善悪・吉凶の標識であります。

・心が小さければ、神気は安定して収斂し、外邪も障害しにくいのですが、憂いの感情の変化に損なわれやすいです。
・心が大きければ、憂いにも障害を受けにくいのですが、かえって外邪に損なわれやすいのです。
・心の位置が高ければ、上の肺は圧迫するので、煩悶し気分がすぐれず、物忘れが多く、何かと固執して言葉で善導し難いのです。
・心の位置が低ければ、心の陽気が振るわず、寒邪を感じやすく、言葉で容易に恫喝されます
・心が堅実であれば、その神気は安定し、守りは堅固です。
・心が脆弱であれば、消たんと内熱に罹りやすいのです。
・心が端正であれば、心機能は正常であり、気血は伸びやかに流れ、邪気を受けにくいのです。
・心の位置が一方に偏り異常であれば、意識が安定せず、節操も弱く、物事に定見というものがありません。

・肺が小さければ、飲邪の停留することが少ないので、喘息を病むことがありません。
・肺が大きければ、飲邪の停留することが多いので、いつも胸痺、喉痺及び逆気症状が出ます。
・肺の位置が高いと、気の逆上をまねきやすく、喘息、肩で息をする及び咳嗽などの病があります。
・肺の位置が低ければ、胃の噴門部に近くになり、胃が肺に迫り、脇下に痛みが起こりやすくやすい。
・肺が堅固ですと、咳と気の逆上を病みません
・肺が脆弱ならば、消たんを発病しやすく
・肺が端正(整っていること)なら、肺の気は伸びやかで、邪気に損なわれにくい
・肺が片方に偏っていれば、気は伸びやかではなく、胸中に偏痛を患います

・肝が小さければ、蔵気は安定し、脇下に病痛を発生することはなく
・肝が大きければ、胃を圧迫し、胃の影響して上は食道を圧迫することにより、胸隔中に苦悶をおこし、両脇が痛む
・肝の位置が高ければ、上に向かって噴門部を圧迫、さらに胸部に密着してそこに煩悶を生じ、息噴(そくふん)の病がおこる
・肝の位置が低ければ、胃に切迫し、脇下を空虚にし、これによって邪気の侵犯を招きやすくする
・肝が堅固であれば、蔵気は安定して損なわれにくい
・肝が脆弱であれば、消たんの病を発生しやすい
・肝が端正であれば、肝気の流れもよく、邪気を受けにくいのです。
・肝の位置が一方に偏っていれば、気を通じず、脇下に疼痛がある

・脾が小さければ、蔵気は安定し、邪気の傷害を受けにくい
・脾が大きければ、脇の下のくぼんで軟らかいところを満ち塞ぐので疼痛、早足で歩けない
・脾の位置が高ければ、脇の下のくぼんで軟らかいところから季脇にかえて痛む
・脾の位置が低ければ、下は大腸の上に被さって、邪気に損なわれやすくなる
・脾が堅実であれば、蔵気は安定し、外邪が侵犯しにくい
・脾が脆弱であれば、蔵気が運行せず、消たんになりやすい
・脾の位置が端正であれば、蔵気は伸びやかにめぐり、侵害されにくい
・脾の位置が偏っていれば、蔵気は伸びやかにめぐらず、輸送化生の機能が失われ、お腹が張る

・腎が小さければ、蔵気は安定して外邪に損なわれにくい
・腎が大きければ、つねに腰痛があり仰向けうつ伏せができず、外邪に損なわれやすい
・腎の位置が高ければ、つねに背骨に痛みがおこり
・腎の位置が低ければ、腰や尾てい骨に疼痛が起こり、狐疝病を起こす
・腎が堅実で精気が旺盛であると、腰骨に疼痛が怒ることがありません。
・腎が脆弱であると、消たん病を受け、さらに外邪に損なわれやすい
・腎の位置が適正であると、精気は充満し、機能は正常で邪気の傷害を受けにくい
・腎の位置が一方に偏っていると、腰や尻に疼痛が起こりやすい

「どのようにして五臓の大小、堅脆などの様相を知るのか?」

「心の場合」
・皮膚が赤く、キメが細ければ小さい
・皮膚が赤く、キメが荒ければ心は大きい
・剣状突起が顕になっていなければ位置は高い
・剣状突起が短く、鳩の胸のように高く突き出ていれば位置は低い
・剣状突起が長ければ、堅実
・剣状突起が薄く小さければ、脆弱
・剣状突起がまっすぐに向かい突起がなければ、適正
・剣状突起が曲がっていれば、位置は不適正

「肺の場合」
・皮膚が白く、キメが細ければ小さい
・皮膚が白く、キメが荒ければ大きい
・両肩が隆起し、前胸部位が突出して咽喉が窪んでいれば位置は高い
・両脇の間隔が狭く、胸郭上部が縮こまり、脇の部位が開いて張っていれば位置は低い
・肩の部位の発達に均整がとれて、背部の筋肉が厚ければ堅実
・肩背部が痩せて薄ければ、脆弱
・胸背部位の筋肉が厚く均整がとれていれば位置は適正
・肋骨が曲がっていて不均衡ならば、位置は不適正

「肝の場合」
・皮膚が青く、キメが細ければ小さい
・皮膚が青く、キメが荒ければ大きい
・胸部が幅広く、脇骨が張り出しているものは位置が高い
・肋骨が低く合して小さくまとまっていれば位置は低い
・胸や脇の発育に均整がとれていて強健であれば堅実
・脇骨が軟弱であれば脆弱
・胸部と腹部の発育が良好で均整がとれていれば端正
・脇骨が偏って突き出ているものは偏頗

「脾の場合」
・皮膚が黄色、キメが細ければ小さい
・皮膚が黄色、キメが荒ければ大きい
・口唇がそりかえっているのは位置が高い
・口唇が垂れ下がって弛緩しているものは位置が低い
・口唇が引き締まっているものは堅実
・口唇が大きくしまりのないのは脆弱
・口唇が上下とも端正で均整がとれていれば位置は正常
・口唇が歪んで、一方が上がっているものは、位置がずれている

「腎の場合」
・皮膚が黒く、キメが細ければ小さい
・皮膚が黒く、キメが荒ければ大きい
・耳の位置が高いものは位置も高い
・耳が後方にめくれている位置位置も低い
・耳が厚くどっしりしているものは堅実
・耳が薄っぺらなのは脆弱
・耳の方が歯茎に近接するのは端正
・両耳が不釣り合いなのは高さが非対称

「ある人は普段から病気にならず、天寿を全うすることができ、恐れおののくような大きな感情の刺激や厳しさ暑さ寒さといった外邪の侵入があったとしても、それでもその人を傷害できない
一方、一日密室の内に住み、さらに恐れおののくような感情の刺激がないにもかかわらず、それでも発病することがある
それらは、なぜか??」
・五蔵が小さいと、外邪の侵入で病が生じるところは比較的少ないが、常に気ぜわしく思い悩み、愁憂(悲しみ悶える)することがしばしばある
・五蔵が大きいと、動作がおっとりして緩慢で、度量が広く、愁憂することは困難
・五蔵の位置が高いと、挙止(立ち振舞)が高遠に過ぎます。
・五蔵の位置が低いと、意志薄弱で、人後(他人の後ろ)に甘んじます。
・五臓が堅実だと、内外の邪気はいずれも侵犯することはできず、疾病は発生しない
・五臓が脆弱だと、病邪の侵入を受けやすく、病気がち
・五蔵の位置が適切であれば、蔵気は調和し、性情は従順、人柄も正直、たやすく人の心を得る
・五蔵の位置が不適切であれば、考えが不正で、盗みを働き、話す内容がくるくるかわる

「六腑と身体の各組織との相応の様子を知りたい」
・肺は大腸で、大腸は外は皮と応じる
・心は小腸で、小腸は外は脈と応じる
・肝は胆で、胆は外は筋と応じる
・脾は胃で、胃は外は肉と応じる
・腎は膀胱・三焦で、膀胱・三焦は外は腠理・体毛と応じる

「蔵府と各組織との相応関係とはどのよう?」

「肺は皮膚と相応し大腸に相合している」
・皮膚が厚ければ大腸も厚い
・皮膚が薄ければ大腸も薄い
・皮膚が緩んでいて、腰回りが太ければ大腸も緩んでいて長い
・皮膚が引き締まっていれば、大腸も引き締まって短い
・皮膚がつやがあれば、大腸の通りが良い
・皮膚が乾いて粉っぽく、肉としっくりしていなければ、大腸もまた通りが悪い

「心は脈と相応し、小腸に相合している」
・皮膚が厚ければ脈管も厚く小腸も厚い
・皮膚が薄ければ脈管も薄く小腸も薄い
・皮膚が緩ければ、脈管も緩い、脈管が緩ければ小腸は緩く大きく長い
・皮膚が薄く脈がか細く弱ければ小腸も小さくて短い
・三陽の経脈の部位にしばしば旋回屈曲がみられれば、小腸の通りが悪い

「脾は肉と相応し、胃と相合している
・肌肉の隆起部が堅実で大きいと、胃が厚い
・肌肉の隆起部が小さく薄弱であると、胃も薄弱
・肌肉の隆起部が痩せて総身と釣り合いがとれていないと胃の位置は低い、低いことによって胃の出口が圧迫され緊縮して食物が順調な通過できない
・肌肉の隆起部が堅実でないと、胃は緩んでいる
・肌肉の隆起部の周囲に小さな顆粒状の粒々が連なっていないと、胃は緊張して縮んでます。
・肌肉の隆起部の周囲に小さな顆粒状の粒々が連なっていると、胃気は結ぼれて塞がり、胃気がふさがっていることにより、胃の入口を緊縮させて、飲食物の順調な下行ができない

「肝は爪と相応し、胆に相合している」
・爪が厚くて色が黄色いと、胆も厚く
・爪が薄くて色が赤いと、胆も薄い
・爪が堅実で色が青いと、胆は緊張して縮んでいる
・爪がしっとりと軟らかで色が赤いと、胆は緩んでいる
・爪が真っ直ぐで白く斑点がないと、胆気は伸びやか
・爪の形が悪く色が黒くて斑点が多いと、胆気は塞がって伸びやかではない

「腎は骨と相応し、膀胱・三焦と相合し、膀胱・三焦はまた外の皮毛に相応している」
・キメが細かく皮膚が厚いと、三焦・膀胱は厚い
・キメが粗く皮膚も薄いと、三焦・膀胱は薄い
・腠理が粗いと、三焦・膀胱は緩んでいる
・皮膚が縮こまって体毛がないと、三焦・膀胱も縮こまっている
・体毛がつやつやでまばらであれば、三焦・膀胱の気は伸びやか
・体毛がまばらであると、三焦・膀胱の気は滞る

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