脈経「弁災怪怖雑脈第十二」

「残賊という脈があるそうだが、どのような種類のものか?」
弦脈・緊脈・渋脈・滑脈・浮脈・沈脈、以上の6種類の脈を残賊というのである。
これらの脈はすべての経脈の病気の時に現れる。

「人為的に作られる緊脈は、何が原因で起こるのか?」
例えば発汗しすぎたり吐かしたりすると肺の中が冷える、それで緊脈になるのである。
あるいは、もともと冷えて咳をしておるものが、考えもなしに冷水を飲むと、そのためにさらに冷えて緊脈を現すこともある。
あるいは、下痢をすると胃の中の陽気がなくなる。
そのため緊脈となることもある。

「翕庵沈という脈の形を滑と言うのは、どのような意味からか?」
沈は純粋な陰であり、翕は混じり気のない陽である。
このように陰陽が和合すると、脈が滑になる。

「災怪という脈があるそうだが、これはどのようなものか?」
例えば病人の脈状が太陽病の脈であって、脈と病気の状態とが一致していた。
それで漢方をつくり、帰る頃までに薬を服用させた。
ところが、薬を服用したあと、病人が吐いたり、または下痢して腹痛を起こした。
そこで問うていった。私が前に脈を診たときには、この証はなかった。
今は正反対に変化している。
だからこれを災怪、つまり予期しない状態というのだ。

「この嘔吐または下痢して腹中痛む症状はどうして現れたのか?」
恐らく、私が診察する前に、何か別の薬を服用していたのであろう。
だから災怪というのである。

「人が病気になって、恐れおののくようになると、その脈はどのようになるのか?」
脈の形は糸のように細くなり、節があるように手触りがゴツゴツしている。
そうして顔面は血の気が引いたように白くなる。

「恥ずかしがる人の脈はどのようなものか?」
脈は自ら浮で弱い。顔面は急に白くなったり、赤くなったりする

「人がものを食べない場合はどのような脈になるのか?」
その脈は自ら渋である。
そして、口唇が乾燥している。

すらすら言葉が出ない者は中風病である。
頭をふるわせながら喋るものは裏に痛みがある。
行動が遅い者は表に強ばりがある。
座って前に伏している者は息切れがある。
座った時に片言の膝を寝台よりおろすものは腰が痛い。
裏に実があって、腹を抱えている状態が、卵を懐中に入れていて、それが壊れないようにしているような様子の者は心臓が痛んでる。

先生が脈を診たとき、病人があくびをするようであれば、これは病気がないとする。
また、脈を診ているときに伸する者は、やはり病気ではない。
例えば病人が壁に向かって寝ているとする。
先生が来たのにもかかわらず、驚いて起きようともしない。
どれどころか、憎々しげに見たり、または言い淀んで喋られないものがいる。
このような病人の脈を診てると唾液を飲み込むことがある。
これは偽の病気である。
もし、脈が正常であれば、病気ではないのは確かだから、吐したり下したりする薬を飲んだり、身体中に無数に鍼または灸をすれば治ると脅かしてやるのがよい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA