脈経「肝胆部第一」

肝は木に象られる。
その腑は胆。
経絡は足の厥陰経で、足の少陽胆経と表裏の関係になっている。
肝の健康の脈は弦である。

肝を生み出す時期、つまり相生関係になるのは冬の三ヶ月間、肝が盛んに働く時期は春の三ヶ月、静まる時期は夏の三ヶ月間、抑えられる時期は夏の土用である六月、肝が悪くなって死ぬのは秋の三ヶ月間である。

また肝が盛んに働く日は甲・乙の日で、盛んになる時間は平旦(午前4時)から日の出(午前6時)までの間である。
病気になりやすい日は戊・己の日で、病気になりやすい時間は食事(午前8時)から日昳(午後2時)までの間である。
死亡しやすい日は庚・辛の日で、死亡しやすい時間は日晡(午後4時)から日入(午後6時)までの間である。

肝の性格を述べてみると、肝の魂を蔵している。
肝は色をつかさどっているので、病気になると皮膚の色の変化が現れる。
肝は筋を養っている。
肝の病気は目に変化が現れやすい。
肝が悪くなると人を呼びつけるような言い方をしだす。
肝が悪くなると身体や目や顔色が青くなりやすい。
肝が悪くなると体臭が臊臭くなる。
肝が悪くなると涙が出やすくなる。
肝が好む味は気を収斂する酸味である。
苦味は肝によい。
辛味は肝に悪く作用する。

肝を治療する兪穴は背部の第九椎の下にある。
募穴は腹部の期門である。
胆を治療する兪穴は背部の第十椎の下にある。
募穴は腹部の日月である。

冬至の後の甲子、つまり六十日目の夜半に少陽の気が起こる。
それが肝が旺盛に働き始めるのだ。

肝の性格は木で、方角でいうと日が昇る東に属する。
季節で言うと春に属する。
そのために肝が旺盛になり始めると、万物も発生し始める。
その気の来る様子は軟弱だがおおらかな感じで、さらに虚弱である。
そのために気の状態が脈に現れる場合は弦となる。

濡だから発汗してはいけない。
弱だから下してもいけない。
その気がさらに旺盛になるように育てなければならない。
またおおらかだから気血の道は開きやすい。
開くと気血は通じやすくなる。
気血がよく通じれば、あらゆる働きが盛んになる。
それで寛で虚、つまりおおらかで、停滞や充満がない虚の状態だというのである。

このような春の気が旺盛に働くためには胃の気が正常でなければならない。
胃の気が損なわれるような事をしてはいけないのだ。

「春の脈は弦のようだというが、どのような弦なのか」
春は肝が旺盛になる時期で、その状態が脈に現れるのだが、肝の方位でいえば東であるように、万物が始めて発生する春の気と相応じている。
したがって、その気の現れる脈は濡弱で軽くて、うつろなのだが、それでも滑らかでまっすぐな形をしている。
それで弦というのである。
この脈に反する場合は病気であると考えるのだ。

「どのような脈を反するというのか」
脈の拍動が実で強い場合を大過という。
病気は身体の外部にある。
脈の拍動が実ではなく、かすかな場合を不及という。
病気は身体の内部にある。

「春の脈の大過及び不及になった時の病気はどのようなものか?」
大過=物忘れをし、ぼーっとして目がくらみ、引っくりがえるような病気
不及=脇胸部が痛み、それが背中まで響く、また脇下や横腹がいっぱいにつまってくる

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