霊枢「論疾診尺篇」
「尺膚を診察するだけで、病気を説明し、外在的な現象から内在的な変化を推測したいとおもうが、どういう診察をすればいいのか?」
尺膚が緊張か弛緩しているか?
脂肪がついてるか痩せこけているか?
滑潤であるか?
薔滞であるか?
肉が脆弱か堅実か?
をみればどの疾病にかかっているのかを推測できる
・尺膚が滑らかでざらつかず光沢があるのは風病
・尺膚の肌肉がふわふわして柔弱なのは、体がだるくて疲れ四肢がだらける病
・睡眠を好み、肌肉が痩せこけているのは、寒熱が発し、簡単には治癒しない
・尺膚が滑らかで潤いがあり脂肪のようであるのは風病
・尺膚がざらざらして滑らかでないもの血が少なく、営が虚している風痺病
・尺膚がざらざらして、乾燥した魚の鱗のようなものは脾土が衰弱して、水飲が変化しない溢飲の病
・尺膚が焼け付くように熱く脈が盛大で騒がしいのは温病
もし脈が盛大であるが、さわがしくなく滑利を呈しているならば、病邪が駆出され、正気がしだいに回復しようとしているのであり、病気が快方に向かっている
尺膚が冷たく脈が小さいのは、泄瀉ち気虚の病です
尺膚が手を焼くような高熱で、先に発熱して後で冷たくなるのは寒熱往来の一種
尺膚が先に冷たく、しばらくし抑えていると発熱を感じるものも寒熱往来の一種
・肘部の皮膚が単独で発熱しているのは、腰から上の部位の発熱の兆候
・手腕部の皮膚が単独で発熱しているのは、腰から下の部位の発熱の兆候
・肘の前部が単独で発熱しているのは、胸部の発熱の兆候
・肘の後部が単独に発熱しているのは、肩背部の発熱の兆候
・前腕の中部が単独に発熱しているのは、腰腹部の発熱の兆候
・肘の後廉から下三、四寸の部位が発熱しているのは、腸中に虫がいる兆候
・手掌が発熱しているのは、腹中の発熱の兆候
・手掌が冷たいのは、腹中が冷えてる兆候
手の漁際の白肉に青色の血脈があるのは、胃中に寒がある
尺膚の皮膚が焼けるような高熱で、頸部の人迎脈が大なのは、熱が盛んであって、血が失われている
尺膚の皮膚が硬くて大であるのに、脈が甚だしく小であるのは、気虚であり、煩悶が加われば、たちどころに死亡する
「目にあらわれる兆候」
・赤色なら病は心
・白色なら病は肺
・黃色なら病は脾
・黒色なら病は腎
・青色なら病は肝
・黄色にその他の色が雑り、はっきり区別できないものは、主病は胸中にある
「目痛を診察する際」
・赤色の絡脈が上から下へ向かうのは太陽経の病気
・赤色の絡脈が下から上へ向かうのは陽明経の病気
・赤色の絡脈が目の外しから内へ向かうのは少陽経の病気
「寒熱往来の病気の診断」
・目中に赤脈があり、上から下へ向い瞳を貫いている場合、一条の赤脈が現れていれば、1年で死にます。
・二条の赤脈が現れていれば2年で死にます
・二条半の赤脈が現れていれば2年半で死にます。
・三条の赤脈が現れていれば3年で死にます。
「齲歯痛(むしば)を診察する場合」
・陽明の脈をおさえると、病変のある部位が必ず単独で発熱している
・病気が左側にあるものは左側が発熱
・右側にあるものは右側が発熱
・上にあるものは上が発熱
・下にあるものは下が発熱
「絡脈を診察するとき」
・皮膚に赤い絡脈が多いものは、多くは熱証に属す
・青色が多いものは、多くは痛証に属す
・黒いものが多いものは、久痺です
・赤・黒・青がともに多く一緒に現れているものは、寒熱証であり、身体に疼痛があります
・顔面の色が微かに黄色味を帯び、歯垢が黄色く、つめにも黄色が現れているものは、黄疸病です。
・横になることを好み、小便の色が黄赤で、脈象が小かつ薔であるのは飲食したがりません。
・病人の橈骨部にある寸口脈と頸部にある人迎脈との大小・浮沈が同じものは難治
・女性の手の少陰心経の搏動が甚だしいのは妊娠の兆候
・小児が病気になった際、髪が逆だっているときは死ぬ
・耳部の絡脈が青く隆起しているのは、ひきつけと腹痛の兆候
・大便が青緑色で乳瓣が雑り、未消化の殻を泄瀉し、加えて脈象が小弱で寒冷であれば、病気は治癒しづらく、もし手足が暖かければ治癒しやすい
一年の四季の気候の変化には一定の法則があります
その法則は陰が盛んになり極まると転編して陽になり、陽が極まると転編して陰になる
陰の性質は寒を主り、陽は熱を主る
寒が一定程度に達すると熱に変化、熱が一定程度に達すると寒に変化します
これが陰陽の変化の道理
したがって、冬に寒邪に感受してすぐに発病しなければ、春になると温熱病を生じ
春に風邪に感受してすぐに発病しなければ、夏になると泄瀉・痢疾の病を生じ
夏に暑邪に感受してすぐに発病しなければ、秋になると瘧疾の病を生じ
秋に燥邪に感受してすぐに発病しなければ、冬になると咳嗽の病を生じ